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大会運営委員長 あいさつ

切り拓く現場から
実践の理念を導いていこう

矢野 正子
日本医療経営実践協会九州支部支部長/聖マリア学院大学名誉学長/元東京大学医学部教授/元厚生省看護課長

第13回「全国医療経営士実践研究大会」福岡大会のテーマは、「医療経営士の働き方が病医院を変革する~ 今、求められるマネジメント能力と具体的実践方法~」です。前九州支部支部長の橋爪章先生のご逝去にともない後任の支部長を仰せつかり、早2年が経過しようとしており、第2回の九州での大会は橋爪先生が担当され、以来11年ぶりになります。

医療経営を担う
看護の立ち位置は?

はじめに、だいぶ昔の話になりますが病棟の看護管理について、私自身の看護師長の経験を記してみます。看護師長は自分の仕事のイメージとして「経営」という言葉は頭の中にはなく、仕事とは以下のようなものでした。
例えば、いかにしてスムースな病棟運営ができるか。看護スタッフについては、まずはスタッフが仕事を辞めないこと、そして「このスタッフをもっと伸ばしてやるにはどうするか」「それぞれのスタッフがその実力・経験・事情に応じた勤務体制・勤務表になっているか」など。病棟の患者さんの看護への依存度はどれくらいか」「看護から見た患者さんの介助度はどうか」など。そして看護実践の中にある問題・課題を見つけ、その解明・明確化・解決のための対策・実践、また研究も行えるようにするにはどうすればよいのか――。そういったことに気を配り病棟運営をしてきたかと思います。
しかし、よく考えてみると、看護師長のこのような行動が、病棟の人間関係をまとめ、結果として看護スタッフにも患者さんにも、仕事がしやすい、療養しやすい、生活しやすい環境を提供・維持するようになり、医療経営として実を結んでいくことに繋がっていくのかもしれません。このようなわけで看護職は、医療経営を成功させる基礎的基本的な単位を担っていると考えます。

医療経営士の実践の理念や
理論をどのように描くか

医療経営士の実践研究は多種多様で、たいへん興味深いと感じています。今までに接した資料・文献の中で、「医療経営士は、医療制度、病院の現実の中にある課題に積極的にアプローチし、課題解決の率先者として①経営改革、②職域の確立、③人材育成/人材活用、リスクマネジメント等、④患者サービス/広報、⑤地域医療連携、⑥その他、で活動する」とありました。「⑥その他」に挙げられる例として、「医療経営の理念・理論の探求」を挙げたいと思いますが、開拓・開発されつつある職域の「現場感覚・現場主義の道標」には、実践の理念の探求や理論構成が求められようになる、と思います。これは、今回の大会における私の基調講演のサブタイトル「―医療経営士という職域の理念や理論をどう描いていくか」に繋がります。
前述のように看護は「経営」を担う基礎的基本的な単位でありますが、その成果がどのように読めるのかに関心があるとは言えず、またそれらの数字がどれなのかについても注意して見ているわけではありません。しかし、今後は役割意識を広げ変えていくなどして、実践力の強化・多様化への努力が求められるでしょう。
病院経営全体を構成するそれぞれの職域の立場から、また、それぞれの立ち位置を医療経営の面から、数値なり理念なりを明らかにする必要があるのではないでしょうか。

これからの経営士の活動の
さらなる発展に向けて

今回の大会がテーマとしている、「今、求められるマネジメント能力と具体的実践方法」に関連して、大会での医療経営士の皆さまによる発表や討議などから現場における実践研究のプロセスや成果をお互いにシェアし合うことで医療経営士の活動がさらに発展していくことを期待して、皆さまとの九州での再会を楽しみにしております。ぜひ会場へお越しください。