吉原 健二
一般社団法人日本医療経営実践協会代表理事
3年に及ぶコロナ禍から社会経済活動の正常化に向けて、わが国は大きく動き出しています。こうした中、「第12回全国医療経営士実践研究大会」を大阪で現地開催できますことに、心より感謝申し上げます。本大会に全国各地から参加いただく皆様に、厚く御礼申し上げます。
一般社団法人日本医療経営実践協会は、医療機関をマネジメントする上で必要な医療および経営に関する知識と、課題解決能力、実践的経営能力を備えた人材「医療経営士」の育成・養成を目的に創立されました。創立から2年後の2012年11月に「第1回全国医療経営士実践研究大会・東京大会」を開催し、今大会が12回目の開催となります。
創立10周年を記念した第9回東京大会(2020年)は新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、無観客開催となりました。翌年(2021年)に予定していた大阪大会は延期となり、第10回・第11回大会は、2年連続WEB開催となりました。コロナ禍を経て、医療経営士の方々が再び大阪会場で一堂に会することは、大変嬉しく、喜ばしいことと存じます。
さて、2010年9月に実施した第1回「医療経営士3級」資格認定試験で、初めての合格者390人が誕生し、2023年4月現在、医療経営士3級1万52人、医療経営士2級1,656人、医療経営士1級112人となり、全等級を合わせた医療経営士の会員数は1万1,820人にのぼります。しかし、全国約8,200病院、約10万4,000診療所を数える病医院で働く医療経営士は、約2,000人と会員全体の2割に達していません。医療経営士がその能力を発揮して病院経営を支えていくには、1病院当たり2~3人の配置が必要でしょう。本会としては、会員数2万人を目標に、病医院に所属する医療経営士を増加させ、その能力・知識の向上に努める所存です。
誕生から13年を経た医療経営士は、少子高齢化が加速する中、住民の健康管理・重症化予防に向けて、地域共生社会の実現を視野に入れた取り組みが求められています。そのためには、これからの病医院のあり方を考えることが必要です。医療は地域住民の健康を守る場所として不可欠なものであり、病医院にはコロナ禍等の緊急事態にも対応できる、強固な経営基盤を確立しなければなりません。医療経営に影響を及ぼす事項を分析し、コロナ禍で明らかになった医療提供体制の課題を踏まえ、各病医院が地域においてどのような役割を担っていくのかという、未来の病医院像を明確にすることが大事です。さらにそれぞれの職域において経営に携わる人材がレベルアップし、医療従事者の働き方改革を進めながら、様々な諸問題に解決の道筋をつけることも求められます。
すなわち、これからの病医院は地域共生社会を実現させる成長戦略を策定し、経営を進化させていくことが重要になります。地域力の強化に向けた「病院完結型」医療から「地域完結型」医療への転換、経営部門における職域の確立と専門人材の育成、医療需要の変化に対応した需給バランスの構築、医療DX等、時代の変化に柔軟に対応できる人材を育成した病医院が地域医療を支えていくのです。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻など社会情勢は予断を許さない状況にあります。しかし、こうした時代においてもこれまでの経験で培った実力や専門性を存分に発揮し、地域医療に貢献できるように医療経営士は活動を続けてほしいと願います。
以上に述べたような現状と課題を踏まえ、本大会のテーマは「医療経営士が創造する病医院の未来像――進化する医療経営とその成長戦略」と致しました。3年ぶりの現地開催となる本大会が、有意義で実り多いものとなり、その成果が未来の医療経営士の活動指針となることを願うばかりです。
最後になりましたが、本大会の開催にご尽力、ご協力をいただいております関係者の皆様に心から感謝を申し上げるとともに、各プログラムにご登壇いただく先生、医療経営士の皆様には、本大会の趣旨にご賛同いただき、快くお引き受けくださいましたことに厚く御礼申し上げます。また、大会運営委員長として開催にご尽力をいただいた関西支部支部長の清水鴻一郎先生に感謝申し上げます。
本大会の開催が、わが国の医療界の発展に大きく寄与できますことを祈念いたしまして、開会のご挨拶とさせていただきます。
令和5年4月